こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。
元保険屋だから詳しいだろ? とネコ好きの友人からペット保険について訊かれました。
その人がどのような経済状態で、何をリスクと思っていてどの程度を保険でカバーしたいと思っているのかにもよるので、細かい条件を訊かないと適切なアドバイスはできませんが、せっかくなので、人間様にとってもベストな保険戦略を考えてみました。
<この記事のサマリー>
保険はリスク管理の1つ。無駄なコストを掛けないために、保険も投資活動と考えるべき。クルマや家を所有しているなら自動車保険と火災保険は止むなし。また個人賠償責任保険は推奨。逆に300万円以上貯金があれば、生命保険は不要。貯金がなければ、定期保険か収入保障保険。ペット保険は有効な選択肢ではないか。
保険はリスク管理の1つ
人生には予期せぬことが発生します。
これを「リスク」といい、保険はリスク対応策の1つで、保険会社にリスクを持ってもらう(=転嫁)ことで、自分のダメージを最小化するために、利用すべきものです。
ところが「一家の大黒柱なら」、「ガンの備えに」等、ムードに流されて、しかも最後は保険のおばちゃんのGNP(義理、人情、プレゼント)で屈して加入するという時代がありましたし、今も無駄に入る方は後を絶ちません。
まずはリスク管理として、何か対応する必要があり、その最善の対応が保険であるかを考えるべきでしょう。
さらに、ファイナンス的に必要性があるのか、また外貨保険など、投資として考えた場合に十分なリターンなりベネフィット(便益)があるのかを軸に判断してください。
自動車保険、火災保険は止むを得ない
まずこれは仕方ないと思われるのは自動車保険でしょう。万が一何かの弾みで人身事故を起こした場合、最悪死亡させてしまった場合は1億円を超える賠償が発生します。
日頃から安全運転するなどのリスク低減策はありますが、子供が飛び出してきたとか予測不可能な理由での事故の可能性もあり、そこは保険でリスクを転嫁するしかありません。
最近はカーシェアリングなども急速に普及していてレンタカーより手軽なので、滅多に乗らないのであればクルマを所有しないというのが一番合理的なのですが。
後は、クルマを買うとディーラーから勧められたりしますが、保険料の高い伝統的な大手損保より、自分で複数社見積もりしてからネット保険に加入するなら断然お得です。
ちなみにいちいちサイトを見て回るより、条件を入力して、オンラインで複数社を比較できるサービスを使うと便利です(無料です!)。
中には、無料見積もりの上、プレゼント付きのサイトさえあります。
同じ対人無制限の保障なら、できるだけ低い保険料のところが良いに越したことはありません。
同様に、持ち家なら、火災保険はやむを得ません。
すでに家屋が30年以上で、田舎で周囲に延焼するような家もないという環境であれば、なくてもいいかもしれませんが。
ちなみに火災保険であれば、保険料の安い共済保険(都民共済や県民共済)を見てみることをお勧めします(中には地震保険もあります)。
失火しないように注意するのはもちろんですが、設備の老朽化した古い家で、電気設備の漏電とかもあるので、加入は必要でしょう。
個人賠償責任保険はおすすめ
最近、自転車事故の賠償事例(自転車で人に大怪我させてしまい、賠償x億円を請求されました)を事例に、生活の中の過失で万が一他人に損害を与えた場合に、最大n億円を保障する、という保険のダイレクトメールとか来ることがあります。
この保険は掛け金も低く抑えられ、高いものでも月額500円、編集人の加入しているクレジットカード会社から紹介のもので月額150円なんてものがあります。
自動車保険の特約として付加されることもあります。自分もですが、家族も保障されます。
うちの周囲もそうですが、自転車の多い住宅地で自転車事故のリスクはありますし、子供が思わぬところで高価な備品を壊した、なんてあり得ることですから、月額200円とか300円で保障されるのであれば、コスパはいいです。
ちなみに海外旅行時の海外旅行保険も、加入はやむを得ないでしょう。
国民皆保険の日本にいると感覚が麻痺しますが、たとえば人気のハワイなどで救急車で担ぎ込まれたりすると、国産の新車が1台買えるくらいの救急車代と医療費が掛かります。
また多少英語ができても、医療の英語は特殊ですから、保険会社が提供する英語通訳のサービスなども役立つはずです。
あとは学資保険は、今の運用環境では入るメリットはほとんどありません。
子供に万が一のことがあった場合には保険金が出ますが、そもそも6歳を超えると子供の死亡率は低くなるので、確率的にはあまり起こらないです。
また、医療であれば多くの自治体で子供の医療費は無料なので、そこもお金は掛かりません。
むしろ安い時に米ドルで積み立てるとか、ドルコスト平均法で世界株や日経平均のETFでも少しずつ積み立てた方が、よほどリターンが得られるでしょう。
生命保険は必要条件に当てはまる場合のみ
悩ましいのは生命保険ですが、ファイナンス的には以下の条件のいずれかに当てはまる人以外は、積極的に利用すべきものではないと思います。
そもそも、生命保険は、1)実際の統計の死亡率よりかなり余裕を持って保険料が設定されている、2)申し込み時の審査(引受査定)で、持病があると加入を断られる、3)資産運用の効果は低い、ということで、ファイナンスとしても、ギャンブルとしても加入者には不利な設定です。
親の代の人からはよく生命保険を勧められますが、昔は金融機関の利息が5〜7%もありました。ですから養老保険で十分な保障と貯蓄機能を付けても、最後に掛けた金額以上が返ってきたのです。
編集人もバイトで貯めた50万円を郵貯に定期で入れておいたら、利子が4万円くらい付いていたのを思い出しました。その貯金は初代Macintosh Plusになってしまいましたが。
そのため、上の世代の方は保険は資産運用に役立つと思っている節がありますが、基本はコスト(経費)であり、資産運用とは分けて考えるべきです。
1、住まいが賃貸であまり貯金がなく、子供がまだ小さい
この場合、ご主人が亡くなってしまうと、奥さんは子供を抱えて途方に暮れてしまうことになります。
小さい子の育児と十分な収入の得られる仕事の両立はかなりの負担になるでしょう。
住まいが持ち家であれば、大半の人が団信(支払い主の死亡や高度障害に備えた団体生命保険)に入っているため保障が付き、住宅ローンが全額支払われます。
それでも毎年の固定資産税や家屋や設備の保守費は必要ですが・・・。
賃貸だと家賃の支払いもあるので、当面の生活費になる程度の最小限の保障はあった方がいいでしょう。
その際の選択としては、1)値段の安いネット生保に入る、2)返戻金(へんれいきん、満期時の払い戻し)はないが、その分値段の安い定期保険または収入保障保険に入る、というのをお勧めします。
保険料は大差ないかと思いますが、両者の違いは、定期保険は死亡時に一括して500万円、1千万円など、まとまった金額が受け取れる、収入保障保険は10万円とか15万円が毎月小刻みに一定期間支払われるというものです。
2、個人事業主や経営者で利益を圧縮したい場合
1、とは逆のケースですが、保険料を支払うことで一部が経費として認められるため、事業主にとっては節税の効果があります。
ただし、以前は全額が経費として認められていることを利用し、一時払いまたは全額前納で保険に入り、一定期間後に解約して高い返戻金を受け取る、ということで大幅な節税に使われていました。
ここが税務当局に目を付けられ、一部しか経費に認められなくなってしまいました。
今後さらに条件が下がる可能性がありますが、そういう使い方の方には有効です。
外貨建て終身保険は有利な投資?
最近は利率のいい米ドルで運用する外貨建ての終身保険が比較的売れています。
でも決して利率が良いわけでもなく、為替リスクを負うのも自分です(保険会社が為替変動による損をカバーしてくれるなら、入る価値はあるのですが、それは無理でしょう)。
200〜300万円以上の貯金があれば(失業や病気でも半年から1年弱はやり繰りできる金額)、スプレッドの安いFX会社で、タイミングを見ながら安い時にドルを買った方がいいでしょう。
安い時期を狙って買うコツは、以下の記事でもご説明しています。
・知っておきたい2つのテクニカルの基本 〜うねり取りには移動平均線とボリンジャーバンドが参考になる
で、結局ペット保険は?
そうそう、ペット好きの友人の相談に答えていませんでした。
国民皆保険の人間と違って、動物の場合は一度獣医に診てもらうと数万円くらい掛かります。
ペット保険の月額保険料は、ペットが若いうちなら1,000〜1,500円くらいなので、年間2万円でお釣りが来ます。
その後、何年かに1度の見直しがあり、保険料も高額にはなります。
また10歳前後を過ぎると、加入ができなくなるか、できるとしても保険料が相当高額になります。
10歳を過ぎると、統計的にペットの疾病率が急上昇するのでしょう。周囲にいるペットを見ていると、確かに9歳とか10歳を過ぎると、すっかり老犬、老猫という感じなので、保険会社もそれ以上のリスクはなかなか取れないはずです。
個別の事情によって変わると思いますし、実際はペットの平均年齢と保険料で試算する必要がありますが、年間4〜5万円以上の医療費が想定されるようであれば、入る価値はあります。
特に家で飼うペットは一般に長生きですが、高齢になると健康維持や病気で、何度もペットクリニックのお世話になることが多いですし。
それを想定すると、ペット保険は有効な選択肢になるでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。