こんにちは。IT/経済ジャーナリスト、投資家の渡辺です。
先日、投資スタイルには、企業のビジネスモデルや財務状況などのスペックから将来の成長を予想する「ファンダメンタル」と、直近の値動きから次の動きを予想する「テクニカル」の2つの動きがあることをご説明しました。
さらにこれらの応用形として、コンピュータを使って売買のタイミングや可否を測り、その判断に沿って売買を実行する「システムトレード」という技法もあります。
この記事の目次
●諸条件をコンピュータに計算・チェックさせてトレードの可否を判断する
システムトレードとは、マーケットに関する各種データから、ある考え方をベースに決められた計算や処理の手順(アルゴリズム)に沿ってコンピュータに売買させるというものです。
海外の文献を調べていると、「アルゴリズムトレード」という言い方もよく見られます。
コンピュータで自動化しているとはいえ、土台になる考え方はファンダメンタルかテクニカル、またはその組み合わせなので、売買に関する考え方というより、実行方法の1つといえます。
ただし日本では売買の自動化は個人には制限もあり、またそれなりの知識や技術も要求されるので、欧米に比べると一般的でないです。
そこで、個人でコンピュータを使ってトレードする方の多くは、過去の値動きを分析したテクニカル指標を組み合わせて、ある条件が揃ったときに(たとえば、いろいろある指標の中で3種類が同時に「買い」のシグナルを出したときなど)売買を実行することが多いようです。
実際には、夜間に過去の株価データからプログラムでテクニカル分析を行い、そこで売買すべきという条件に合致した銘柄を翌日朝に寄付き(よりつき、マーケットの開始して最初に売買が成立するタイミング)に売買する、またはある条件に沿って指値で入れておく、という手法を取ることになります。
●欧米では標準ツールMetaTraderでシステムトレード
日本ではごく一部のFXブローカーしか対応していませんが、欧米では多くのオンライン証券会社やFXブローカーから、自作の、フリーの、または市販のプログラムを使ってシステムトレード(自動売買というべきでしょうか)できる環境が提供されています。
その際のツールとして、MetaTrader 4(メタトレーダー、MT4と略称される)というトレード用アプリケーションがほぼ業界標準として使われています(以下の画面)。
オンライン証券会社の取引システムと接続できるので、FXや株、先物などの値動きを取り込んだり、値動きがある条件になったかチェックしたり、そこからが自動で売買注文を出すなど、プログラミングで自動処理できます。
ネット上にはプログラミングやアプローチに関する資料、プログラムのコード、オンラインの研究グループなどがあり、少なくない人がこのアプローチでシステムトレードに取り組んでいます。
●システムトレードを実際にやってみるには
日本国内で個人がシステムトレードに取り組むには、以下のようなアプローチがあります。
- 既存のオンライン証券会社が提供する自動売買サービスから、評価の良いものや自分で使ってみたいものを選んで利用する
- 取扱いブローカーと契約し、フリーの、または市販のプログラムでMT4を使う
- シストレ専用アプリケーションを購入する
- 取扱いブローカーと契約し、自作のプログラムでMT4を使う
- 一般的なプログラミング言語で自力で開発する
数字が大きくなるほど、難易度が上がってきます。
編集人はある時期、東証一部の全銘柄の株価(終値)データファイルから、複数のテクニカル指標で値動きを分析するプログラムを自作し、半年で30万円くらいの利益を出したことがあります。
ただ株価データを入手して毎日メンテナンスするのはけっこう手間が掛かるので、挫折しました。並行してMT4も細々と運用しているので、そのアプローチについてはあらためてご紹介したいと思います。
●すでに市場で使われているシステムトレード
外資系の投資銀行などアクティブな大手の機関投資家では、日経平均の先物などを対象に自動売買システムで日々のトレードを実行しています。
ところが機関投資家などで使われている売買システムは、テクニカル指標ももちろん見ているとは思いますが、それ以外にも日経平均や東証株価指数といった市場全体の動き、売り手と買い手がどのくらいいるかという板情報、先物の動き、米国や中国、ヨーロッパ各国、ドル円やユーロ円など海外市場、政治や経済に関するニュースなど、さまざまな環境要因をポイント化して、おそらく個別株よりは、日経平均のETF(株式市場で売買できる投資信託)や先物を売買しているのではないかと思います。
●個人でシステムを組むなら
将来的にAIによる投資システムを導入して、あまり手間や時間を掛けずに日々の生活費を賄い、誰もが本当に自分の好きなことに熱中できる世の中づくりを実現したい、というのが編集人の夢です。
おそらくそのようなシステムは、1)対象となる銘柄の動き、2)関連する銘柄の動き、3)日経平均やダウ、ドイツやフランス、イギリスの市場の動き、4)ドルやユーロ、ポンドや元など主要な外貨の動き、5)政治や経済に関する世界中のニュース、6)TwitterやFacebookなどSNSでのバズワードや政治経済に関するつぶやきなど、とにかく市場参加者が参考にしそうなさまざまな情報ソースをコンピュータに与える必要があると思います。