投資全般 相場技法

【書評】うねり取り入門 〜基本を学べる古典的名著

投稿日:2018-01-23 更新日:

こんにちは。IT/経済ジャーナリスト、投資家の渡辺です。

荒海ともいえる相場の中で、利益を出すためには自分の収益モデルを決めること、そしてその中でも「うねり取り」が有効な技法であることを先日説明しました。

<関連記事>

うねり取りをマスターしよう

そのための参考書は何かといえば、まずはこの古典的名著をお勧めします。

うねり取り入門―株のプロへの最短コース

昭和の相場師である林輝太郎先生の「うねり取り入門」です。個人投資家である程度利益を出している方の何割かは、林先生の著書から伝統的な「勝てる」相場技法を学んでいると思います。

最近は上げ相場なのでそれなりに儲かっている人は多いと思いますが、本書の書かれた当時の調査によると8割の投資家は損しており(今も半数以上の方は予想が外れて値下がりしたり、売り時を逃したりして損しているのではないでしょうか)、儲けから証券会社の売買手数料を引いて1円でもプラスになっていれば投資家としては素晴らしいと述べられています。

本書ではまずうねり取りを使って利益を上げている林先生の教え子の事例を、いくつか紹介しています。

あまり経験がなくても、60〜90日周期で株価が上下する(うねる)こと、そして逆張りを基本に(※)株価が安い時に買い、何度か分割してできるだけ安く買っていき、次の上昇期である程度上がったところで利確するというパターンで売買するだけで、利益を上げていました。

※逆に、高値の時に空売りを入れて、安値の時に買い戻すという入れ方も可能です。

基本となるのは、1)自分が売買する銘柄を絞る(銘柄固定)、2)方眼紙に手描きで株価のグラフを作り、日々の株価の推移を記録する(グラフと場帳)、3)一度に売買せず、何回かに分けてポジションを作る(分割売買)です。

証券会社に電話するか新聞の株式欄くらいしか情報のなかった当時と比べると、今はコンピュータやインターネットで即時に情報が得られるので比較にならないくらい環境的には恵まれています。

それでも、ニュースを見て無節操にあちらこちらの銘柄に飛び付くのでなく、銘柄を絞り込んで、知識や感覚的にその銘柄の値動きや業界の背景情報などに慣れると有利であり、その株価の上げ下げに上手く乗ることで(波乗りといわれます)、利益を得ていくということです。

その際に過去のグラフや値段の推移を見て、その銘柄がどのような値動きをするのか、そして安値圏か高値圏かを見て、売買のタイミングを測ることになります。

とはいえ、未来のことは分からない以上、最安値で買いを入れることはできません。そこで価格変動のリスクを低減化するため、何度かに分けて買う「分割売買」を強く推奨しています

たとえば200円の株を安いと思って全力買いしたら、さらに下がって100円になってしまった。このままでは塩漬けで200円に戻るのを待つしかありません。

100円が200円になるのは、かなり時間を要するでしょう。

しばらく資金が動かせないまま、場合によっては1年も2年も待って、運が良ければ戻ったところで若干のプラスで撤退できるかどうかでしょう(銘柄によっては配当収入は期待できますが)。

このとき資金に余裕があって、200円で千株、100円に下がったところでもう千株買えば、自分の持ち玉の平均値は(200+100)÷2=150円に下がるので、100円から少し戻して150円になったところで収支とんとんで撤退もできますし、200円まで戻れば、50円 x 2千株で10万円の利益を得ることもできます。

不等分割で1:2で入れていけば、(200+100+100)÷3で平均値が133円になるので、半値戻しの150円でも利益が出せるようになります。

林先生の著作を読んでから、編集人は上下する株価を見ながら、安値圏で何度かに分けて自分に有利なところで買い、平均値を少しずつ下げていく作業が株を買うということだと、目を開かされました。

**********

さらに続くセクションでは、株価が60日程度の周期で上下を繰り返すことを統計も交えて説明しています。もちろん機械的に周期を繰り返すわけでなく、そこにノイズや乱れが入るのはやむを得ません。

それでも「だいたい60日でうねるという性質があることを念頭に置くことで、うねりを取ることがやりやすくなるわけです。

林先生の著作はこれ以外にもたくさんありますが、実は上記のようなことを中心に、わりとシンプルな原則を繰り返し繰り返し述べています。他の著作とかを読むと、デジャヴを覚えるほどです。

でも、結局その原則をベースに、自分の感覚も鋭敏にして注意深くポジション(玉)を自分に有利になるように売買を通じて操作していくことで、相場から利益を得ようという型を作り上げていくことだと編集人は理解していますし、実際に効果があるものとして数年前から実践しています。

特に本書が書かれた当時は、まだネット証券もなく売買手数料は高いもので、分割売買もメリットはありませんでしたが、今はネット証券なら数百円の手数料で売買ができ、値動きのリスクを吸収できるということで、昔よりやりやすい環境にあるといえます。

それほど資金が多いわけでもないですが、ここ数年ずっと20〜30%程度の利益を出し続けていられるのは、林先生の教えのお陰だと思っております。

-投資全般, 相場技法

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