こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。
AIによる仮想通貨投資のアルゴリズムを開発している会社が、資金調達のためクラウドファンディングによる資金調達をする、というニュースをレビューします。
これは、「AIとテクノロジーの力で金融を広くオープンに解放したい」をコンセプトに設立されたベンチャー企業の株式会社エメラダが、日本株や中国株、ビットコインなどの仮想通貨を対象とした投資アルゴリズムの開発プラットフォーム「QuantXFactory」と、そのアルゴリズムを個人投資家向けに販売するプラットフォーム「QuantXstore」の開発・提供をするというものです。
いずれ、企業でなくても個人がクラウドシステムなどを利用して手軽にアルゴリズムを開発したり、あるいは有償でも優れたアルゴリズムを購入できるようになるということです。
もしそれほど高価でないコストで、個人が使いやすいプラットフォーム上で自動売買システムを構築できるのは素晴らしいことです。
●優れたアルゴリズムを自動生成
もう1つ、このプロジェクトで注目すべき動きは、
プラットフォーム上に集積されたアルゴリズムの運用成績をAI(人工知能)で分析処理して、より精度・成績の優れたアルゴリズムの自動生成を行う「QuantXAI」というシステムも開発しており、順次ロボアドバイザーとして国内外の個人投資家へと開放していく予定である
という点です。
FX業者などでも、優れたパフォーマンスを上げているトレーダーの売買のやり方やタイミングをコピーする「ミラートレーディング」というサービスを提供しているところがあります。
それを複数の人が開発したシステムの良いところ取りで実現するということです。
●仮想通貨のアルゴリズム投資の3つの懸念
ただ多少なりともシステムトレードを実践している身としては、仮想通貨に対するアルゴリズムトレードの精度については慎重になるべきだと思っています。
まず価格の激しい乱高下で安定資産でないこと。先日の暴落でレバレッジ取引していた多くの人が資産を吹っ飛ばしましたが、あの乱高下を見るとレバレッジは1.5倍以上掛けてはいけません。
次に、現物がなく歴史も浅いため投資の判断基準となる適正価格が出せないことも難しいです。
唯一できるとすると、直近の暴落の下落幅に少しプラスして、どのくらいまで下がるか予防線を張っておくくらいでしょうか。
さらに実世界のイベントはもちろん、ネットの仮想世界でのイベントにも激しく反応します(先日のコインチェック社からのXEM盗難は記憶に新しいところです)。
そのため、AIで作るとしても重層的な複雑系モデルになり、これが予測の精度を落としてしまうと思います。
逆にいうと、SNSやネットニュースから情報を拾って判断するというアルゴリズムは、リスク管理のためにも必要と言えそうです。
想定外の激しい動きに、自動売買システムがどう対応するのか。そこが開発上、もっとも難しいポイントになるだろうと思います。
AIにファンドマネージャーをやらせて自分は遊んで暮らす、というのは現時点ではまだ難しそうです。