こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。
「週刊ダイヤモンド」の巻末エッセイで、数少ないまともな経済学者である野口悠紀雄先生のエッセイが衝撃的だったので、ご紹介します。
何と、すでにサービス提供されているAI投資によるファンドのパフォーマンス(成績)がファンド全体の平均より全然よろしくない、という悲しい結末でした。
ちなみに、ビジネスや投資の情報収集のため、昔からビジネス雑誌を何冊も読んでいますが、少し前に「楽天マガジン」を導入しました。
自分がよく読んでいる「週刊ダイヤモンド」、「週刊東洋経済」、「プレジデント」、「エコノミスト」、「日経トレンディ」があり、月額400円で全部読めてしまいます。
また電子ブックなので、保管の場所がいらなかったり、1〜2ヶ月分くらいはバックナンバーも読めたり、非常に便利です。
スマホだとちょっと読むのがきついですが、iPad、8インチ以上の画面をもつKindleや他のAndroidタブレットがあるなら、無料のお試し期間が1ヶ月あるので、ぜひお試しください。
https://magazine.rakuten.co.jp/
この記事の目次
AI投資のパフォーマンスは標準以下
さて今週の記事は、今話題のAI投資のパフォーマンスを検証したものでした。
もちろん、ある一定期間を切り取って、ベンチマーク(比較の基準)となるファンド全体のパフォーマンスの平均値と比べたものなので、未来永劫そうであるという訳ではありません。
それでも、投資信託をするなら、定期的にパフォーマンスを見直し、どのくらいの損益があるのかを把握しておくことは重要です。
それによると、何とAI投資による運用ファンドのパフォーマンスは、ヘッジファンドの平均を下回っていました。
「AIに働かせて、自分は好きなことをして暮らす」を目標とする編集人にとっては、ショッキングな内容です。
運用にはアクティブとパッシブがある
資産運用の基本的なスタイルとしては、1)日経平均やTOPIX、海外ならダウ30やNASDAQなどそれぞれの国の株価指数にできるだけ近似させ、市場と同じパフォーマンスを目指すパッシブ運用と、2)運用者の独自の分析や思考、手法によって市場を上回るパフォーマンスを目指すアクティブ運用の2種類があります。
いわゆる市場の動きをベースにした、積極派と消極派に分かれるわけです。
AI投資は、市場の様々な兆候から市場の動きを予測するという意味で、アクティブ運用派といえるでしょう。
編集人が依拠する「うねり取り」も大きく分けるとアクティブ運用ではありますが、ある、あまり値段が大きくは変わらない株の上下動を利用するという意味では、比較的消極的なアクティブ運用といえるでしょう。
株価の予測は可能なのか?
うねり取りの古典ともいえる林輝太郎先生の著作の中でも、株価の予測が可能か不可能かという議論が何度も出てきます。
結論としては、複雑系(当時、そういう単語はなかったですが)のマーケットにおいて、確実に予測できるような指標や手法はないという結論になりました。
逸話として、全財産を投入して最新コンピュータを買ったエンジニアが、ついにあきらめて自ら生命を絶ったとか、わりと挑戦者の暗い話が出てきます。
占いに頼る人さえ出てきますが、残念ながら占いも自分自身への利益、すなわち私欲が絡むと、判断を適切に読み解くことができないと一般的にいわれています。
実際に、占いで金持ちになったという話は、売れっ子の占い師になるくらいしか聞いたことがありません。
さらにいえば、オプションの適正価格を導く数式を導出し、ノーベル経済学賞を受賞した学者を迎えて、世界中の市場で荒稼ぎしていたヘッジファンドLTCM(Long Term Capital Management)でさえ、想定外の暴落で大損を出して破綻してしまいました。
そこで昔の相場師たちは相場を当てることに注力することはあきらめ、ただ動きを感じながら、サッカーやバスケットのディフェンスのように、動きに付いていくという方針に切り替えました。
それで確立されてきた相場技法が「うねり取り」であり、うねり取りの土台でもある、分割売買で何度かに分けて安値で買うことで、下落のリスク(時間のリスクでもある)を低減させるということです。
予測ができるかは永遠の課題
では実際にAIで予測ができるのか、というと、これは物理学でいう「ラプラスの悪魔」と同じで、現実には難しいのではないかと思っています。
これは世界中の出来事を完全に把握していて、力学など物理学の法則も完璧に使いこなせる悪魔がいれば、未来予測が可能である、という物理学の思考実験です。
実際には、力学の数式はAIに覚えさせて計算されることはできるでしょうが、世界中の出来事とそれが相場に与える印象は把握のしようがありません。
結論としては、いくらAIに膨大なデータを与えても、未来予測は難しいのではないかと思います。
そこで編集人が考えるのは、以下の2種類のいずれかのアルゴリズム(問題解決のための解き方)になります。
主要指標と確率を重み付けする
今でも、ドル高に振れると日本の株価が上がりやすい(動かないことや下がることもたまにあるので、絶対ではない)、ドル高に振れると輸出産業の株が上がる、別の状況では、輸送など国内産業の株価が上がる、原油高になると、石油に依存する産業の株価が下がる、などいくつかの経験則はあります。
このような指標をいくつも設定して、指標Aが上に動くと日経平均がX円上昇する確率が76.2%、また指標Bがよくないと輸送業が上がる確率が68%、というように、それぞれの動きの確率を出していきます。
次にそれぞれの指標の日経寄与度(日経の動きに、どのくらいの強さで影響を与えるか)も算出していきます。
両方の数値の組み合わせで、上がる確率を出すこと、そして日々のデータを蓄積しながら、日々P-D-C-Aサイクルを回して、その精度を上げていくことになります。
もちろん、市場参加者の気分によるものが多いので、数学的な厳密さでの相関はないだろうな、あくまで出せるのは確率論的な意味での傾向だけだろうと考えています。
うねり取り投資の判断基準をAIに学習させる
もう1つのアルゴリズムは、編集人が実際にうねり取りをする際の思考や着眼点をAIに学習させることです。
今でも銘柄を選ぶ際やポジションを作っていく際の以下のような基準は、ある程度明確になっているので、プログラミング可能だと思います。
- ビジネス自体が黒字体質
- 1%以上の配当を出せる程度の利益が出ている
- 株価が100株単位なら1,000〜2,000円、千株単位なら100〜200円(1回の取引が20万円以下)
- PER、PBRが業界の同業他社と比べて割安(できればPBRが1以下)
- 直近2〜3年のグラフである程度、規則的な上下動が見られる
- 5日や25日、75日移動平均線、さらにボリンジャーバンド−2σを下回ったら買う
- 直近2年の高値の90%を超えたら利確
- 利確の際は、玉の量と資金量を見ながら2回または3回に分けて決める
- いったん利確し終えたら、過去の最安値に達したとき以外は、1ヶ月は様子見でポジションは建てない
上の条件を見ると数値化、ロジック化できるところが多々ありますが、フォントをピンクにしたところは、わりと感覚的に決めているところで、こういうところにはAIを使う余地があると考えます。