うねり取りは数少ないアマチュアでも勝てる見込みのある相場技法ですが、それでもリスクはあり、その対応法を知っておくことは重要です。そのための有効なツールとして、長期的な株価の動きを見るのに役立つ月足の使い方を解説します。
こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。
勝てる「型」を短期間で身につけるという意味で、「うねり取り」の練習をオススメしてきました。
しかし、やりやすい=リスクがないというものではありません。
一番大きなリスクは、相場のトレンドが変わる瞬間に当たってしまうことです。
この記事の目次
トレンドが継続していれば
たとえば、ある銘柄が100〜150円のレンジで上下している場合、110円を割ったら買い、150円に近づいたら利確というのが、もっとも基本となるアプローチです。
または140円を超えたら最初の売り玉を入れて、それから5円単位でナンピンして平均値を下げていきます。
できるだけ平均値を有利にするよう(買いなら下げる、売りなら高くする)、玉(ポジション)を重ねていくのが原則です。
ある程度上がり切ったところで、次の下落の波に乗って、145円から105円くらいまでの下げを空売りで取るというやり方もできます。
同じトレンドでレンジで動いている場合は、この方法の組み合わせで40円程度の幅で利益が取れます。
1万株(10単位)なら1回のサイクルで40万円(税引き前)が利益になります。
年に2サイクル回せれば、150万円の資金で80万円の利益=年利50%になります。かなりベストシナリオではありますが。
うねり取りのリスクはトレンドの変化
このように、ある程度株価が安定した銘柄を使えば、初級者でも利益を出しやすいのがうねり取りの強みです。
そのため、東証一部上場で1日の取引量が多い、いわゆる重厚長大企業の株を選ぶよう、うねり取りの教科書には書かれています。
流通量が多ければ、仕手株が入って株価操縦もできませんし、だいたい多くの人が適正と考える水準から大きく外れることがないので、値動きも安定しているからです。
それでも、政府による景気刺激策で株式市場全体が上がったとか、逆にリーマンショックのような全世界に影響するような経済的な損失イベントがあった場合、株価のレンジが変わることがあります。
このレンジが変わるのが、うねり取り投資家にとって大きなリスクになります。
冷静にレンジを見るためには、利確したらポジションを0にして心身を休養させつつ、しばらくは相場の観察に専念すること、そして日足だけでなく、中長期の動きを見る「月足」を時々は見ることが強く推奨されています。
休みを入れる理由
分かりやすいように買いを例に取ると、うねり取りのやり方は、ある程度株価が底値圏に来たところでの「仕掛け」→「ナンピンで平均値を下げつつ、玉を増やす」→十分に高値圏に来たところでの「利確」です。
そして、その後、持ち玉(ポジション)をゼロにした後の、一定期間(最低でも2週間、できれば1ヶ月以上)は休むというのが、隠れたキーワードになっています。
これは休むことで気持ちをリセットして、新たな気持ちで次の周期に挑むため、と説明されています。
ただ編集人の経験では、1サイクルで1勝負というのはもちろんありますが、それ以上にトレンドの変化を見極めるというのも、重要な目的であると考えています。
(「休む」と言っても「ポジションを作らない」という意味で、自分のターゲット銘柄は引き続き日々ウォッチしていきます)。
この間も周期が変わらないようなら、また株価は100円目指して下がっていくので、また十分に下がってきたところで、買い玉を入れ始めればいいのです。
逆に、ここで下げ止まらないで150円から160円、170円と上がっていくようであれば、それも明らかにトレンドが変わっているので、要注意です。
お、上がってきた、なんて不用意に空売りを入れたりすると、160円で売りを入れたらその後200円まで上がってしまい、含み損に耐えつつ、日々貸株料を払う事態もあります。
(というか編集人自身、それで何十万も損切りして、折角の前のフェーズの利益をほとんど吹っ飛ばしたことがありました)。
長期傾向は月足で見る
こういう状況の時は、過去半年とか1年の短期的な傾向を見るのでなく、月足(1ヶ月単位の動きを表したローソク足)を使い、過去2年とか3年、それでも足りなければ5年くらいまで遡って動きを見ます。
トレンドが変わるときは、3ヶ月とか続けて下落したり、上昇したりします。
一例として、うねり取りで生活をしている元大学教授の話がありますが、その方のルールとしては、3ヶ月連続して陰線(ローソク足で月初より月末の方が値が下がっている場合)が出た後の4ヶ月目から玉(ポジション)を建て始めるそうです。
そこからさらにもう1段、2段と下げる場合がありますが、その時のために資金には余裕を持たせておき、さらにナンピンして平均値を下げていきます。
「心理学者」とありますが、このうねり取り投資家の方の元の職業が大学の心理学科の先生だったというだけで、別に投資の心理を分析しているわけではありません。内容は正当なうねり取り投資の手法と体験談です。とはいえ、内容は具体的で非常に参考になります。
サンプルとして、うねり取り投資家がわりとよく使っているパイオニア(6773)の月足を過去5年分見てみましょう。
3ヶ月連続の法則がある程度当てはまるパイオニア
以下のチャートが、うねり取り投資家がよく見るパイオニアです。
Yahooファイナンスの「テクニカル分析用多機能チャート」を使っています。
パイオニアは、これまた昭和のうねり取り個人投資家として億り人になった立花義正氏が最後に行き着いた銘柄です。
立花義正氏の苦闘と最後にたどり着いたうねり取りの技法を克明に描いた名著「あなたも株のプロになれる」で広く知られたためか、おそらくパイオニアが個人投資家によく使われるようになったと思われます。
とはいっても、モノづくりニッポンの隆盛期で、さらにオーディオ全盛期の業界リーダーであった当時のパイオニアと、特にヒット商品もなく、財務状況もあまりよくない最近の同社では、ちょっと比較にならないかもしれません。
今は配当も出ないほどですし。
とはいえ、以下の月足グラフを見ると、陽線(赤)が3ヶ月続くと上昇が止まるし、逆に陰線(青)が3ヶ月続くと下落から上昇に転じています。
また2015年終盤に392円まで上昇していますが、これはアベノミクスで緩和策をやっていたタイミングなので、やや過熱気味でしょう。
ここ2年分の動きは、160円から260円の範囲での動きなので、この辺りが妥当な範囲だといえそうです。
まとめ
初級者でも利益を出しやすいといわれるうねり取りですが、マーケットに絶対はなく、トレンドの変化は大きなリスクになります。
そのリスクを低減するために、利確してポジションを解消したら、しばらくポジションを建てないで休み、客観的に動きを観察するべきです。
たとえ少しでもポジションがあると当事者になってしまうので、どうしても主観的になってしまうからです。
また日足だけでなく、常に月足を活用して、過去3ヶ月下落していてそろそろ上昇に転じるタイミングかを見極めるというのも一つの方法です。
さらに、十分な資金を持って参入し、何回かに分けて分割売買しつつ想定より下落しても平均値を下げていくようにします。
ここでサンプルとしたパイオニアですが、配当が出ない点は注意が必要なポイントです。
動きが停滞して玉を持ち続けているような場合は、利益を産んでくれません。
もし買いを中心とした戦略であれば、配当のある銘柄を選べば、もし動きが停滞してしまっても配当収入が得られます。