こんにちは。IT/経済ジャーナリストで投資家の渡辺です。
先日ご紹介した「うねり取り入門」と並んで、うねり取り投資家の必読書ともいえる名著をご紹介します。
参考: 【書評】うねり取り入門
上記の本の著者であり、相場技法の教師でもあった林輝太郎先生がプロデュースした、うねり取りで億単位の資産を築いた投資家・立花義正氏の「あなたも株のプロになれる―成功した男の驚くべき売買記録」です。
この記事の目次
●1銘柄のうねり取りでダメダメアマチュア投資家から億り人になった相場師の話
著者の立花氏は、パイオニア(6773)のうねり取りだけで億り人(当時そのような言葉はありませんでしたが)になった昭和の市井の相場師です。
自分にとって感覚的に合う1つの銘柄に出会い、とことん付き合い、その動きに精通し、ご自身を「パイオニ屋」と呼んでいたそうです。
確かに今でもパイオニアの動きを見ると、調子よく上がったかと思うと、どーんと下落したり、分かりやすい上下動がよく見られるので、うねり取りをするにはいい銘柄かもしれません。
編集人の感覚だと、ボリンジャーバンド−2σ(シグマ)を下回ったら出撃して、分割売買で平均値を下げながら、20-30円の幅を取る、という戦法が取れそうに見えます。
●失敗する投資家のフルコースの後に
本書の興味深いところは、立花氏が伝統技法の相場技術をしっかり身につける、いわば「パイオニア株の熟練職人」になる前の苦闘の日々についても、かなりプライベートなことまで立ち入って、包み隠さず記述しているところです。
多くの負ける投資家が歩んだように、最初ビギナーズラックで少しばかりの利益が出て、そこから無手勝流のやり方で損をします。
やり方がまずいと反省し、しっかりした先生に付いて勝てるやり方を学ぼうと思い立ったはいいものの、プロの相場師からは軽蔑されているような、ほとんど詐欺としか言いようのない先生に弟子入りしてしまい、お金を騙し取られる話まで書かれています。
今でも証券会社の宣伝マンの立場で、でも肩書きはエコノミストということで、テレビの経済番組に出て一般投資家の買いを煽るような発言を繰り返しているような方は、両手の指でも数え切れないほどいます。
いろいろ法律や行政レベルでの監督や監視があるとはいえ、やはり金融市場はジャングルであり、法の範囲内での煽りや騙しは普通に存在しているわけです。
●片足を無くし、最後の希望を求めて兜町へ
相場での利益を夢見るアマチュア相場師が経験する失敗を繰り返し、大金を失った立花氏。
最後は暴落で多額の含み損と追証のプレッシャーから、自社工場の(立花氏は大手メーカーの中間管理職だった)立入禁止エリアの入り、製造機械に当たって片足を失ってしまいます。
残された最後の資金で商品相場をやろうとした立花氏は、相場の本場・兜町へ行き、小さな取次店にふらりと立ち寄ります。
その店で、良心的と思われる昔気質のような老相場師に諭され、銘柄固定方式でのうねり取りに絞ることにして、相場技術に開眼していきます。
●プロ相場師の売買の棋譜が詳細に見られる
その際に、どのように売買しているのか、あるタームでの詳細な売買記録と解説が掲載されています。
うまくナンピンしたり、あるいは見込みを誤ってしまい、一部を損切りしながら、次の流れを待ってあらためて有利な条件で入れ直したり。
そして玉を操作しながら、最後は十分に利益が乗ったところで利確して、しばらくはポジションをゼロにして相場を休み、心身や感覚をリセットする様子まで分かります。
何となくやればやるほどドツボにはまっていた時代を思い出して、少し悲しくなりつつも、自分への戒めと初心に帰るため、年に1〜2回は本棚から取り出して読み返す名著です。